米国会計業界には、なぜ「顧問料の価格破壊」が起きなかったのか?(前編)
みなさん、こんにちは。
以前、本メルマガでもお伝えした
アメリカ会計事務所の現状レポートに
多くの反響をいただきましたので
今回は、その続きをお届けします。
米国会計業界には、 なぜ「顧問料の価格破壊」が起きなかったのか?
もう15年も昔になりますが、弊社で発行していた
『月刊シリエズ』1999年2月号では、
大前研一氏に「税理士の未来」と題した
特別インタビューを実施しました。
これまでに米国会計業界への取材で得た情報をまとめた結論と、
当時の大前氏のインタビュー内容が、
重なる点が非常に多いので、合わせて紹介いたします。
同インタビューで、大前氏は
「税理士の生存確率は3分の1」
と話しています。
もちろん、税理士の数が3分の1に減少してしまうことではありません。
価値のある仕事をする税理士が3分の1に減ってしまい、
残りの3分の2は、付加価値の低い仕事を
やり続けるということを指しているのです。
現在の会計業界を見ると、まさにその通り。
では、税理士が提供する価値とは何かを考えていきたいと思います。
まず、価値のない仕事はどうなるでしょうか?
価値がないと価格が下がる一方です。
巡回監査の価格が下がっていますが、
それが巡回監査の価値の下落を
そのまま表しているともいえるでしょう。
奇しくも大前氏は
「会計事務所業務では税務申告、記帳代行、
この2つは価格が確実に下がります」
と予測しています。
一方、アメリカの会計業界で
何が最も価格が下がったかというと、実は申告業務なのです。
年商500万、800万、1000万円未満の個人事業主レベルが
会計事務所に求める価値は何でしょう?
節税対策ももちろんですが、
それ以上に申告代金を安くしたいと考えているのです。
アメリカでは全員が確定申告を行い、還付金をもらいます。
その際、自分で面倒な申告書を書くより、
2万~3万円を払って代行してくれるのなら、
H&Rブロックに頼もうと思うものなのです。
つまり、こうした個人事業主は、
申告という業務に対して価値を感じていないので、
安い価格で代行してもらおうとするのです。
大前氏の予測にあるように、
税理士は価値を与えるか、
安いサービスをたたき売りをするかに二分されます。
お客様は会計事務所を選ぶ判断基準として、
価値で選んだり、コストで選んだり、
スピードで選んだりします。
よって今後の会計事務所は、誰に向けて何をやるのかを
決めることが重要になってくるのです。
大前氏は今後の会計事務所サービスは
「一気通貫になる」と語っています。
われわれが開発している「ハイブリッド会計Crew」は、
銀行口座の情報を読み取ってきて仕訳をつくります。
あるいはクレジットカードの情報で仕訳をつくっていきます。
このような「一気通貫」で、家庭に「家計簿」という
概念が戻って来ると説いています。
さらに大前氏は、このように説明しています。
お客様側が記帳する電子会計(Crewのような)が普通になり、
家計簿が家庭に戻ってくるでしょう。
クレジットカードの支払いや自動引き落としまですべて対応する。
このような電子家計簿ができると、
日本で初めて、家庭にバランスシートという概念が入ってきます。
そこから減価償却という発想が出てきて、
家計と企業の経理システムの思想はほとんど同じになります。
いままで個人の場合はフローだけで、
バランスシートは存在しませんでした。
しかしこれからはフローだけではなく、
年金や貯金、家屋、あるいは生命保険などのストックが
いかに富を生むかが人生を左右するようになってきます。
だからこそ、個人部門も、ストックベースの会計制度に
移行することが望まれるのです。
こうした流れを先取りできる税理士は、
必ず勝ち残ることができます。
大前氏は見事に未来を予測していました。
この続きは、次のメルマガで書きます。
今週もアメリカでCPAに会って
クラウド会計がどのようになっているか見てきます。
ホテルで原稿を書いている、ひろせでした。